りるのエロゲ備忘録

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月に寄りそう乙女の作法

こんばんは、働きながらこの文章を書いています。

今回紹介するのは有名な作品ということで、知っている方も多くいるとは思いますが、改めてぼくなりの切り口で解説していこうと思います。

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つり乙シリーズにはいくつか派生がありますが、今回は無印「月に寄りそう乙女の作法」に限った話をします。

 

またシリーズ作品の追い方については、無印から時系列が繋がっており、大蔵遊星が主人公であるものが「乙女理論とその周辺」シリーズとなっています。

一見正統シリーズに見える月に寄りそう乙女の作法2、2.1、2.2に関しては、無印の主人公とメインヒロインの息子が主人公で、無印からは20年ほど時間が空いていますし、過去の作品で登場したキャラはほとんど出てきません(衣遠兄様の40歳くらいの立ち絵は見られます)。無印キャラが気に入った人、特にりそなが好きな人は乙女理論からやりましょう。

 

◎要素

『服飾』『セレブ』『女装』『学園』『シュールギャグ』『主従関係』

女装は残念ながらヒロインではなく主人公です。主人公に声がついているバージョン、ついていないバージョンがあったはずなので、購入時は要注意。シリーズを買えば前作の主人公をフルボイスにするパッチみたいなのがついてきたはずです。

登場人物がほぼお金持ちなので、会話や立ち振る舞いはそれなりに箔がついています。一般人とは価値観が違い、お金には頓着せず、自分のプライドや立場を重要視した様子が多く見られる部分で彼女らがセレブであることを示唆しています。

その分、プライドや立場が脅かされるシナリオを読んでいる時の胃が痛くなる感覚はおしごと並です。主人公は従者という立場なわけですが、従者の行動も主人の格に傷をつけてしまうんですよね。「〇〇家はこんな分を弁えられないメイドを雇っているのか」、と。

やらかしたのは自分なのに迷惑をこうむるのは他の人っていう図、マジでお腹痛くなります。

しかし、そんなセレブ特有の感性に触れたり、微妙に面白くないギャグがあったりと良い点も沢山あります。

 

◎キャラクター

・桜小路ルナ

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無印はこの人のための作品です。プレイした人はみんな好きになったと思います。

デザインの才能、努力家、お金持ち、性格は曲がっていないし容姿も美しい、と、世の中の持てるもの全てを詰め込んだような完璧才女です。容姿に関しては、それが原因で両親と疎遠になってしまったという過去もありますが、ルナ様は高校生にして自立しているどころか、株で一山当てて今や両親よりも資産が大きいというチートっぷり。

普通お金持ちキャラって、性格が曲がってるか、両親の威を借りてるだけで本人はポンコツか、お金にものを言わせて努力しない人のどれかに分類されがちです(実際お金持ちが沢山出てくるこの作品にもそんなキャラが多い)が、彼女にはそんな一面もありません。一周回って存在そのものが嫌味に見えてくるレベル。

個人ルートについても特に文句を付けるところはなかったと思います。彼女は読者の期待に応えるのがとても上手く、不快な会話は何一つありません。強いて言うならルナ√をやってしまうと他の√が物足りなく感じてしまうので、全キャラプレイするつもりの人は最後に回した方がいいというくらいでしょうか。

ちなみに女装主人公のア〇ルをもにょもにょされちゃうのは彼女のルートだけです。好きな人は最後までやりましょうね。

 

・柳ヶ瀬湊

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主人公の幼馴染。湊の家は他のキャラクターの家に比べるとそんなにお金持ちという訳では無い​──メイドを雇うくらいのお金はあるらしい──ので、感覚がかなり庶民寄り。舞台となるお嬢様学校では他の生徒とかなりズレがあり、どうしても浮いてしまいます。服飾や学問に関しても高い能力を持っている訳ではないので、クラスメイト的には「落ちこぼれの貧乏人」くらいのポジションだと思われます。活発なのが取り柄なのですが、おしとやかな雰囲気の学園ではそれすらも仇となってしまうこともあります。

そんな彼女ですが、庶民派故の可愛さやお転婆は他の√では見られないものとなっています。シナリオは良くも悪くも庶民的で、色々と理由付けが弱いなーと思う部分もあるのですが、普通の人の恋愛ってそんなもんじゃないですかね。勘違いとか、偶然とか。他の子達から浮かせたかったという雰囲気を感じました。

 

・ユルシュール

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スイス人でありながら、ファッションの学校であるフィリア学院のことを聞きつけてわざわざ海を渡ってきた服飾ガチ勢。ライバル視しているルナが入学すると知ってくっついてきた……みたいな話があった気もする。とにかくやたらと勝負したがる決闘者気質。このゲームをやっていると、貴族の会話には勝敗があるなー、と感じることがあるのですが、彼女についてはその傾向がかなり強いです。また、日本語を教わる際にルナや従者に悪ふざけされ、度々言い間違いや怪しい言葉選びをしてしまうことがあり、ポンコツツンデレポジションであると言えます。

個人√では……あまり覚えていないのですが、彼女には裏表がないので共通とほぼ同じようなテンションで進んで行ったと思います。恋愛モノではなく物語として考えると、ルナ√よりもこちらの方が王道のイメージ。ルナという最強のライバルに、その従者に助けられながら立ち向かっていく。ジャンプ漫画とかでありそうです。

ルナ√以外の全てに言えることですが、ユルシュール√では特にルナ様を裏切ってる感覚がすごいです。どの√でも主人公はルナのメイドであるという立場は変わらないわけで、その上でライバルたるユルシュールと恋愛していくのは、個人的には背徳感より違和感を感じてしまいました。

 

・花ノ宮瑞穂

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和風屋敷に住んでるタイプの貴族。華道や茶道などの日本的文化に幼い頃から触れ、また芸術的素養も高く、特に着物などの日本的衣装のデザイン技術は将来を約束されているほど。普段は凛としている人だが、トラウマにより男性が苦手で、触れたり目に入る程度でも嫌悪するほど。そんな事情で女子校でありデザインの学校でもあるフィリアに入学。

……この設定と主人公が女装して学園に入学する事実を考えれば、大体彼女の個人√内容が察せると思います。

それどころか他√でも、主人公の女装がバレると勝手に病んでみたりこの子のせいでルナたちのグループに近づけなかったりと、わりとヘイトを買う立場にいます。

まぁ陰湿で根深い闇を抱えているあたりは日本人らしいのではないでしょうか。

個人√の見所は衣遠兄様。

 

〇メタ的な話

・シナリオ総括

地の文がわりと全てを語ってくれるため、ぼくから取り立てて書くようなこともありません。強いて言うならシナリオスキップの形式が割と斬新で、スキップ状態で場面や章が切り替わると、「この章をスキップしますか?」という画面が出てきて、章ひとつを丸々飛ばしてしまうことができるので、分岐でセーブを忘れてしまっても比較的快適に進めることができます。

無印から続編へは、

無印BAD→乙女理論とその周辺

無印ルナ√→月に寄りそう乙女の作法2

というふうに続きます。エロゲだからやれるマルチシナリオですが、将来をより未来まで描いているという点で、正史はルナ√になるんですかね?タイトルもそのままですし。

あとは時系列を扱うのが上手いと感じました。主人公の過去パートに始まり、各キャラクターに奥行が見え、立場が見え、行動に説得力が増しています。過去がたくさんの伏線やフラグを孕んでいて、シリーズ化したのも納得ですし、そちらでも多くのキャラの過去や未来が描かれていて、つり乙ワールドは収まるところを知りません。一見サブキャラの八千代さんの過去とかもガッツリでてきますからね。

 

 

・服飾というテーマ

受け身にシナリオを読んでいると流してしまいがちですが、なんでこのテーマを選んだんでしょうか。

貴族の嗜みと言えばピアノやバイオリンなどの音楽関係、絵画や華道なんかの芸術関係がイメージとして根付いていると思います。まして服作りはぼくの中ではどちらかと言うと庶民的なイメージに近いです。小説家とか漫画家とかと方向性は同じ気がしてます。切ったり縫ったり、実働的な部分が多いからかもしれません。完成品は美しくても、至る過程は全く美しくないですし。

このゲームではメインのデザインを花形として扱う場面がありますが、実際パリコレなんかに出てくる衣装って貴族がデザインしてたりするんですかね?

また、この学校を卒業したという事実自体に価値を見いだしていた人たちがいたのも疑問でした。例えば、フィリアにはメイドを付き従えて授業を受けることが出来る規則があるのですが、勉強はメイドに任せ、自分は学ぼうとしない生徒もいたようです。服飾だとかのセンスを磨く勉強って、自分が出来ないと意味ないでしょう。

まぁその一部生徒は置いておくとして、なぜお金持ちが挙って服なんか作ってたんだろうなーと、ぼくがプレイしていて唯一出てきた疑問でした。

主要キャラにはそれぞれに理由があるんですけど、他のモブたちはなんだったのかなーと。

つり乙2の頃には、フィリアの学部が拡大し、音楽学部や料理学部なんかも出来ていますので、あくまで芸術のかたちのひとつとして捉えられていただけなのかもしれません。

 

◎終わりに

ちょこちょことシリーズについて言及してきましたが、正直無印はその中でも群を抜いた出来と断言できます。

注意をあげるなら、シリーズに手をつけた時にメインの目標が全シリーズ通して「コレクションで賞を取る」からほぼぶれないので、そこに飽きが来る人もいたり、シナリオの長さから「なんか同じような文読んだ気がする」と冷めてしまうことがあるかもしれませんが、小説を読める人なら大丈夫だと思いますし、むしろアプローチや言葉遊びを楽しめると思います。

 

いつもよりちょっと長くなってしまいましたが、ここまで読んでいただきありがとうございます。更新頻度が低いのは仕事のせいです。たすけて。

落ち着いたら乙女理論については書きたいと思っています。恐らくつり乙史上最も痛快です。

 

◎この作品が好きな人にオススメの作品

とりあえずシリーズをやってくれ。

(・未プレイなのですが、「俺たちに翼はない」をプレイするといいそうです)

 

次回予定↓

金色ラブリッチェ(現在プレイ中)