りるのエロゲ備忘録

Twitter @fairy_rire

水葬銀貨のイストリア

ギャンブルって楽しいですよね。

負けた時のリスクを飲み下し、勝つために思索を巡らせる。或いは運を天に任せて脳天気な顔でカードを捲る。

勝っても負けても辞められない、蟻地獄のようなゲームとも言えます。

今回はそんなギャンブルを中心に据えたエロゲの話です。

 

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要素

『学園』『ギャンブル』『家族』『死生観』『トラウマ』『献身』

かなりシリアス要素の強いシナリオです。もしかしたらプレイ中1度も笑うことが出来ないかも知れません。が、その分カタルシスを味わうことが出来、シナリオを終えた時の気持ちよさ、開放感は随一です。

苦手な方はアホが出てくるゲームを挟みましょう。

 

キャラクター

公式ページに書いてある以上のことを書くのは野暮だと思い、今回は何も書かないことにしました。

みんな可愛いですが個人ルートは最低限の出来でしかないので、彼女らの思惑を知る機会として捉えた方が良さそうです。

ふわふわとした立ち位置のキャラが多いですが、語られるまでは詮索する必要はありません。

 

メタ的な話

茅ヶ崎英士

主人公です。公式のキャラ紹介に何故か居ないのでぼくが書きます。

彼はとても平凡な人間です。どれくらい平凡かと言うと公式に紹介を書く必要がないくらい。理想だけが高く、能力がそれに追いつけず、気だるい諦観を感じながらその惰性に流されているような普通の人間です。

後出しつよつよ設定や急な覚醒もありません。シリアスパートだけ頭が良くなったりもしませんし、まるで将棋だなとか言ったりもしません。

しかし、彼の抱える問題や境遇は分不相応なものでした。このゲームの根幹というかシナリオのテーマとして、本当に平凡な人を主人公に据えて、特異な環境に放り込むとどうなるのか?というものがあるように感じました。

平凡平凡と言いつつ、いざ異世界に飛んだら適応してみたり、実は裏で……みたいな設定に飽き飽きしているオタクが多い中、革新的なテーマを放り込んできたなと思いました。

 

ここまで読んで、体験版だけやった人は「いや、英士君普通にギャンブル強いじゃん」と思う人もいますかね。

しかし彼の強さはあくまで知識量、経験の差によるものであり、彼自身が神に愛されているとか、そういうわけではないんですよね。

例えばポケモンで、ストーリーだけプレイして相性を覚えたばかりの人と対戦して負ける気がしますか?

彼の強みは「得ようと思えば誰でも得ることが出来、活用出来る程度の知識」しかありません。

ですから、場数をこなした歴戦の猛者、本当の強者には到底適うはずがないんです。もこうが3値を知っているからと言って夢咲楓には勝てないってことです。

そして彼は平凡な人間なので、全てを救おうとはしますが、現実に全てを救えるヒーローではありません。

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ぜひ、このゲーム最初の選択肢に絶望してください。

 

そして、『ギャンブル』です。

いくら強者が強者たりえても、聖なる炎やリフストを外していたら強者であることを発揮できない。アイへで怯んだら何も出来ないのはみんな同じです。

『ギャンブル』に関して言えばもっと確率は高い。ルールと役を知っていれば、勝てる可能性は誰にでもありますし。

逆に言えば、絶対に負けられない勝負所で呆気なく事故ってしまう可能性もあるわけで、それってごくごく平凡なことですよね。

また、『ギャンブル』をテーマにした物語では、主人公は最後には知略か豪運のどちらかで勝利を勝ち取るのがハッピーエンドへの絶対条件ですが、これは漫画ではなく、マルチストーリー展開のエロゲです。

 

彼は勝てるのか、負けるのか?

シナリオでは大事なポイントとなってきます。彼が凡人であることを念頭に、可能ならば彼自身に没入するつもりでスリルを感じて欲しいです。

 

シナリオ総括

知り合いを繋げていけば世界中の人にたどり着きうると言いますが、このゲームのキャラクターたちは狭い人工島、アメマドイにすし詰めになっています。だからこそと言うか、人間同士のつながりは強く、その関係は友好だけではありません。

悪意があれば、どこかに被害が生まれる。それをどうにかしようと献身する善意もある。このゲームはその複雑な絡み合いで出来上がっています。

しかし、登場人物の中に明確な悪は1人しかいません。正義の反対はまた別の正義だと言うように、善意も時にはぶつかり合うものであり、自らの行いに正しさを見出しているからこそ善意であるとも言えます。そういう人は正しいという隠れ蓑を被っているがために前が見えず、あとに引けません。先が見えず不確定な、自分だけを信じるしかない​───ギャンブルに通じるものがある気がしますね。

 

過去を語られない少女

この物語では、ほぼ全てのキャラクターの過去が語られます。

その人の本質や成り立ちを深く知るためには過去を知ることが1番効率的で有効です。それもあって、キャラクターたちを印象的に感じる人も多いと思います。歪められた人、挫折した人、何かを志した人。そしてそれらはもう変えることができません。刺青のように一生剥がれることはなく、折り合いをつけて付き合っていかなけらばならない。そしてそれらといつか向き合う時が来るかもしれません。

そして、過去が見えた人の言動には一貫性というか、その人にとっての合理性が見えてくるはずです。

しかし、そんな登場人物の中で1人、全く過去を語られないミステリアスな少女がいます。

当然その人の言葉や行動には合理性が見られません。

じゃあ彼女は一体どういう目的で物語に関わっていたのか?

それはtrueの1番最後にわかるのですが、ぼくは彼女は「読者」であったのではないかなと思っています。

彼女が「読者」でなかったら、この物語は生まれていなかったでしょう。

少なくともぼくは、潜在的に彼女と同じ考えを持って物語に触れているのだと思います。

ぜひ最後までプレイしてみてください。

 

最後に

今回はなんとなくふわっとした解説になってしまいました。

理由としては、言及しない方がいいかな、と思う部分については触れることもしていないからです。書いてしまうと面白くない部分は、自分の目で確かみてくれ。

文字がいっぱいで読みにくかったかもしれません。最後に僕がこのゲームで1番可愛いと思うCGを貼って終わりにします。

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ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

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